脱臭,集じんが同時に行える新型空気清浄装置の開発

          大阪府立大学 環境保全学研究グループ


現段階で市販されている空気清浄器では,室内空気などのダストは100% 近い効率で捕集できるが,粒子径の小さいガス状物質,例えば,タバコの煙の悪臭成分などを完全に除去するのは未だ困難である.本研究室では大気圧非平衡低 温プラズマにより,まず,タバコの煙の悪臭の原因となるアセトアルデヒド,あるいはごみ処理機から発生するアンモニアの分解に焦点をあわせ,交流高電圧方 式プラズマリアクタによる分解あるいはエアロゾル化の実験を行っており,現在までにアセトアルデヒドとアンモニアガス単独では90%以上の分解効率が得ら れている.このプラズマリアクタと従来式電気集じん装置(ESP)を結合させ,超高効率な脱臭,集じんが同時に行える新型空気清浄装置の開発を行っていく


 

図1 多層平板プラズマリアクタ

このリアクタは高流量のガスを処理するために製作され,アルミフィルム電極と誘電体であるポリエステルフィルムでラミネートされたアルミフィルム電極が軸を中心に交互に巻かれている多層平板構造をしている.ラミネートされた方のアルミフィルム電極には交流高電圧(60Hz)を印加してもう一方は接地としている.

 


図2 アセトアルデヒド除去の実験結果

アセトアルデヒド除去の実験結果を示す.横軸はリアクタへの電圧で縦軸は濃度である.すべての流量で印加電圧が8 kVのとき除去率は最大となり,5,10 L/minでは約90%,20 L/minでは80%のアセトアルデヒドが除去されている.


図3 アンモニア除去の実験結果

アンモニア除去の実験結果を示す.横軸はリアクタへの電圧で縦軸は濃度である.印加電圧が8 kVのとき 5,10 L/minでは完全にアンモニアが処理されている. 20 L/minの場合においても85%のアンモニアが除去されている.


(a)Applied voltage Vp-p=0 kV

(b)Applied voltage Vp-p=8 kV

図4 NH3分解時のFT-IRによる副生成物の分析(10 L/min

アンモニア分解時のFT-IRによる副生成物の分析を流量10 L/minの場合に行った.図4はプラズマを印加した場合としない場合の吸収スペクトルの測定例である.図よりO3, HNO3, HCOOH, CO, N2O, NH4NO3のピークが確認され,それらの化合物が生成されていることを確認した。


図5 たばこ煙中のCH3CHOとNH3の除去

5は実際のたばこを使ってたばこ煙を作成し,たばこ煙中のCH3CHOとNH3の除去を試みた結果である.なお,本実験ではたばこ煙を乾燥空気によって1/10に希釈し,流量を5 L/minに設定して行った.この図より,印加電圧が8 kVにおいてアンモニアNH3は完全に除去されているが,アセトアルデヒドCH3CHOの除去率は50%程度であった.